平成28年4月1日付けで田尻久雄教授の後任として、内科学講座 消化器・肝臓内科の講座担当教授(主任教授)に就任しました猿田雅之です。当講座は、昭和25年(1950年)に上田英雄先生が教授として「第一内科」が創設され、昭和33年に高橋忠雄教授、昭和49年に亀田治男教授、平成3年に戸田剛太郎教授へと引き継がれました。平成12年には内科臓器別の改編で「内科学講座 消化器・肝臓内科」が設置され、平成17年に田尻久雄教授へと引き継がれて参りました。
東京慈恵会医科大学には、本院(附属病院)の他、柏病院、第三病院、葛飾医療センターの3つの大学附属病院、複数の関連病院があり、140名を超える当科医局員が診療と研究を担当しております。
消化器・肝臓内科が担当する臓器は、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆嚢、膵臓と多岐にわたり、それぞれの臓器に炎症性や機能性の疾患、悪性疾患が存在することから疾病数も多く、正しく診断をすることが大切です。そこで、当講座では、かつて存在したナンバリング研究室を廃止し、「消化管班」、「肝臓班」、「胆膵班」、「腫瘍班」の4つの専門分野に分けた研究室体制としています。各分野の専門医師が専門的な診療・治療を行いますが、入院患者さんに対しては、研究班によらない2〜3名で構成される主治医チーム9チームで対応しています。研修医やレジデントの先生は、主治医チームの一員として診療に参加しますので、全ての領域の多様な疾患を経験することができます。
実際の臨床では、他領域の分野が密接に関わる病態も多く、外科、内視鏡科、放射線科、病理部、看護部、薬剤部、栄養部など、関連科と連携を取りながら診療や治療にあたっています。具体的には、炎症性腸疾患カンファレンス(IBDカンファレンス)、肝臓カンファレンス、胆膵カンファレンス、化学療法カンファレンス、肝病理カンファレンスなどがあり、関連科と合同して毎週開催しています。
私自身は、消化管領域のうち、特に炎症性腸疾患の病態解明と治療を専門にしております。潰瘍性大腸炎やクローン病、腸管ベーチェット病に代表される炎症性腸疾患は、若年者に多い疾患ですが、慢性化し完治し得ないものとして難病に指定されています。患者数も年々増加しており、その病態解明と新規治療の開発が急務とされております。東京慈恵会医科大学でも患者数が激増しており、2020年春までの統計で本院だけで1100名を超え、柏病院、葛飾医療センター、第三病院の3つの分院をあわせると3000名超える患者さんが通院しており、同疾患の解明、完治を一日も早く達成できるよう臨床・研究に邁進しております。また、各研究班でも、難治性疾患の完治を目指した臨床に即した研究に取り組んでいるため、若い医局員は自分の興味ある臓器の研究に属することが可能です。研究に興味をもつことができれば、大学院への進学、海外への留学も積極的に支援する環境が整っています。
また近年、女性医師の医局員も増加しておりますが、医師としてのキャリアの向上だけでなく、出産や育児などのライフイベントも大切にして欲しいとの願いから、時短勤務などの生活に合わせた勤務体系もフレキシブルに対応しています。
消化器・肝臓内科は、多種類の臓器を担当するため疾病数が多く、さらに内視鏡や超音波下の各種治療あるいは化学療法と治療法も多いため、正しい診断・治療を施せることが大切ですが、それだけではなく患者さんの心のケアもできるような人間的に魅力ある医局員の育成にも努めています。東京慈恵会医科大学の建学の精神である「病気を診ずして病人を診よ」をしっかりと胸に刻み、「慈恵医大にいけば必ずしっかりと治療してくれる」と患者さんが満足する診療科となるよう、これからも進んで参ります。
最後になりますが、私は医局員の皆にいつも「好きこそ物の上手なれ」と話しています。それは、自分が好きで自分で選んだ専門領域であれば、きっと頑張り続けることができ、臨床面でも研究面でも良医になれると思うからです。私は医局員の皆と向き合い、切磋琢磨し、一人でも多くの良医を輩出する素晴らしい医局となるよう尽力していく所存です。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
2020年6月吉日
東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科
主任教授 猿田 雅之(さるた まさゆき)
略歴
- 平成9年3月
- 東京慈恵会医科大学医学部医学科 卒業
- 平成11年4月
- 東京慈恵会医科大学医学部 第一内科 医員
- 平成14年4月
- 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科 臨床系内科学専攻博士課程入学
- 平成14年4月〜平成16年3月
- 東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 病理学講座 病理診断学分野 国内留学
- 平成16年4月〜平成17年3月
- 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科 病態解析・生体防御学 ウイルス学 派遣
- 平成17年3月
- 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科 臨床系内科学専攻博士課程 修了(医学博士)
- 平成17年8月〜平成19年9月
- 米国Cedars-Sinai Medical Center, Inflammatory Bowel Disease Center 博士研究員
- 平成19年10月
- 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 診療医員
- 平成24年4月
- 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 診療医長
- 平成24年4月
- 東京薬科大学 非常勤講師
- 平成24年12月
- 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 講師
- 平成25年4月
- 学校法人慈恵大学 大学評議員
- 平成27年4月
- 難治性小腸潰瘍の診断法確立と病態解明に基づいた治療法探索 研究開発協力者
- 平成28年4月
- 東京慈恵会医科大学 内科学講座 消化器・肝臓内科 主任教授
- 平成29年4月
- 東京薬科大学 薬学部 客員教授
主要研究分野
炎症性腸疾患の病態、消化管免疫、消化管病理、消化管の神経ペプチド
学会資格・役職
資格
- 日本内科学会認定
- 総合内科専門医
- 日本消化器病学会認定
- 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会認定
- 消化器内視鏡専門医
- 日本肝臓学会認定
- 肝臓専門医
役職
- 日本内科学会 評議員
- 日本消化器病学会 国際委員会委員 / 関東支部会評議員 / 財団評議員
- 日本消化器内視鏡学会 関東支部評議員
- 日本消化器免疫学会 役員選考委員会委員 / 評議員
- 日本消化管学会 英文誌編集委員会
- 日本小腸学会 理事
- 日本カプセル内視鏡学会 代議員
- 日本炎症性腸疾患学会 総務委員会委員長
- 「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班 研究分担者
- NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ) 理事
- 英文誌Tohoku Journal of Experimental Medicine Executive Editor
- 英文誌Digestion Associate Editor